3年前(22歳)

日本での自身の『趣味』がバレそうになり、肝が冷えた人形は、海外へ飛ぶことを決めた。

(※結局バレてはいない)

そうして辿り着いたのがイギリス・ロンドン。

勿論、新たな餌場を探すために海外へ来たのである。

さぁ、どんなやつを舞台から降ろして、その席を奪ってやろうかと意気込んだのもつかの間。

ばったりと遭遇してしまう。

以前、日本で活躍していた俳優。

若かりし頃に共演し、そのまま役を途中退場し、どこかへ飛んだと噂された俳優が。

そう、以前自分が舞台から引きずり降ろした者だ。

「やばい」

相手は人形のせいで芸能界に居られなくなり、海外でやり直そうとしたものの上手くいかず、途方に暮れていた。こうなった原因が目の前をフラッと歩いているとなれば。

捨てるものもない彼は、無我夢中で人形を追いかける。

咄嗟に人形も抵抗するものの、あっけなく追い詰められてしまう。

そして自身の顔に相手が手を掛け、自身の目を……抉った。

「やめろ！！！」

余りの激痛と恐怖に、「どうにかしないといけない」と感じた人形は、近くにあったレンガを手に取り、思うがままに目の前の相手を殴りつけた。

―――完全犯罪―― 今までバレたことのない行為。

それを何度も行ってきた人形にとって、初めての報復であった。

それは想定しているものでは無かったのだ、所謂トラブル。

ただ、不幸中の幸い。人形は自身を殺しに来た相手に対して、反撃し、生き残ることが出来た。

ただ、不幸中の不幸。目の前の相手は自らの手によってこの世を去った。もう息はない。

――――――――え？ 僕、人殺したの・・・・？

まるでサスペンスドラマの悲劇のヒロインになった気分だ。

こいつが悪い。こいつが殺されに来たのが悪い。

だってそうだろ？誰が見てもそうじゃないか。

……………………………………………………そう、だよな…………？

でも、分かんないけどこれは隠さないといけない。

僕は悪くないけどこれは隠さないといけない。

隠すのは、得意だから。